もうすぐ2歳半を迎えるわが家の娘。2歳から始まった「お姫様ブーム」はさらに本格化。ドレスやアクセサリーでおめかしをすることに加え、”王子様の存在”が気になるように。「わたしも王子様とけっこんした〜い」「ママの王子様はだ〜れ〜?」と、”王子様”や”結婚”に憧れを抱くようになりました。
絵本『かぐやひめ』はそんな見た目も心も”お姫様一色”の娘に選んだ1冊。しかし、改めて読んでみると”THE お姫様物語”とは異なる結末から意外な学びがありました。2歳の娘らしい観点にも驚かされた『かぐやひめ』の魅力をご紹介します。
求婚を断り続けるかぐやひめ。育ての親にも別れを告げ最後に選ぶ“幸せ”とは
あるところに子どものいないおじいさんとおばあさんが暮らしていました。おじいさんが竹を取りに出かけると、切った竹から小さくかわいい女の子が現れます。おじいさんとおばあさんは女の子を「かぐやひめ」と名付け大切に育てました。
美しく成長したかぐやひめの噂は国中に広まり、貴族や帝から結婚を申し込まれます。しかし、かぐやひめは誰とも結婚することを望みませんでした。無理難題を与えることでどうにか求婚を断り続け、涙ながらに「十五夜の晩に月へ帰らねばならないこと」をおじいさんとおばあさんに伝えます。
悲しむおじいさんとおばあさんに別れを告げ、お迎えの人たちと共に月へと帰って行くかぐやひめ。おじいさんとおばあさんは戻ることのないかぐやひめの名前を呼びながら冷たく光る月を眺め続けるのでした・・・。
お姫様=王子様と結婚じゃないの!?期待を裏切る結末から娘が感じたこととは
かぐやひめの美しさに結婚を申し込む帝や5人の貴族達。娘がハマっているthe お姫様の世界では、”素敵な王子様と結ばれる”のがお決まりのパターン。しかし、結婚を断り続けるのがかぐやひめ。「どうして王子様と結婚しないの?」「かぐやひめの王子様はだ〜れ〜?」以前読んだ『おやゆびひめ』のように”最後は理想の王子様と巡り合う”という結末でもなく、かぐやひめが選ぶ幸せは”月の世界へ帰ること”でした。
お姫様と王子様は常にセットでインプットされている娘は、なんとも言えない不思議な気持ちで物語を読み終えた様子。「かぐやひめは王子様より月が大好きなの・・?」2歳の娘らしい問いかけになんと答えるべきか悩みましたが、私は「そうだね、かぐやひめが月の世界で笑って暮らしていたらいいね」と伝えました。“お姫様は王子様と結婚するのだけが幸せじゃないんだよ”など、あまりにも現実的な答えは2歳の娘にはまだ必要ないと思っています。でも、「かぐやひめが月の世界で笑って暮らしていたらいいね」という私の返答を聞き、「元気でね~!ばいば~い!」と笑顔で手を振る娘の姿を見て、「言葉で伝えなくても十分娘の世界が広がったのだな」となんだか嬉しくなりました。
絵本が子どもに教える新しい世界。親が言葉で伝えなくても幅広い価値観を育むきっかけに
“王子様と結ばれて幸せそうなお姫様”。自分もそうなりたいと憧れを抱くのはとても素敵な心の成長だとほほえましく感じています。様々な気持ちが育つことは肯定しつつも、”お姫様=王子様と結婚”がすべてでないのは事実です。もちろん2歳の娘に、ジェンダーに関することや生き方の多様性について今から説明する必要性は感じませんが、『かぐやひめ』を読み終えたときの”不思議な気持ち”は娘に新しい世界を与えてくれたはず。親が言葉ですべてを教えなくても、子どもたちが自ら感じ、様々な価値観を受け入れられるよう導いてくれるのも絵本の魅力。さて、次はどんな絵本を読もうかな。