親子で笑い合おう!ユーモアは生きる力
保育・子育てアドバイザー 研究員の上野里江です。
子どもと一緒にいると、思わず笑ってしまう…そんなことってありませんか?
誰かを笑わせようなんて子どもは考えていないと思うのですが、遊んでいる様子や子どものひとことにニヤッとなったりアハハとなったり♪
子どもって、ユーモアセンス抜群だなぁ~と、いつも思います。
そのユーモアこそ、私は生きる力だと思うのです。
日常の中で、親子の会話の中で、ユーモアがあふれていたら素敵ですよね!
今回は、そんな「ユーモアのある子育て」をテーマにお届けします。
笑いのツボはどこにある?
保育士時代、0歳から6歳の子どもたちと関わってきた私。
何よりも子どもたちの笑顔が見たくて、どうやったら笑ってくれるかな?をいつも考えていたように思います。
0歳の赤ちゃんは、積み木を積んで高くなったところで倒れるたびに大笑い。
にらめっこで変顔したり、いないいないばあっ!って、顔見せるだけで大笑い。
1、2歳になると会話も楽しめるようになってきて、そこにあるのに「アレ?ないね~?」と、わざと探すふりなんかすると、冗談が通じてケラケラ笑い。
3、4歳になると、よく考えるようになるから笑いも高度になってきて、クイズやとんち、ナンセンス絵本でワッハッハ笑い。
5歳を過ぎるころから、大人みたいな冷静さや複雑なことを考える力もついてきて、子どもだましでは笑ってくれなくなるけれど、勝負ごとや不思議なことには興味津々。心が動くと思わずニヤリ。
年齢によって笑いのツボは進化していることを実感しつつ、何歳になっても子どもの笑顔は、見ている私が癒されているように感じていました。
子どもに限らず、笑いがあるとその場の空気が和むというか、温かくなりますよね。
反対に、緊張してカチカチに固くなっていると、その場はピリピリした空気を感じることもあります。
子どもが笑っている、というのは、それだけでその場が安心できる場だということ。
子どもの心が育つために一番大事なのが、この安心感。
あなたは毎日、子どもと笑い合っていますか?
ごっこ遊びはコントみたい!
3歳ごろから盛んになる見立て遊びやごっこ遊び。子ども同士のやり取りを聞いていると、思わず笑ってしまうことばかり。
お医者さんごっこでは…
「どうしましたか?」
「お腹が痛いんです」
「じゃぁ、注射します」
「え?注射?」
「泣かなかったら、シールあげます」
「えー?」
「泣いてもシールあげますよ」
この会話、いつも病院で泣いてもシールをもらっているからかな?なんて思いながらニヤリ。
お店屋さんごっこでは…
「いらっしゃいませ、ジュース屋さんです」
「オレンジジュースください」
「すいませーん、売り切れです」
「じゃぁ、リンゴジュースください」
「あっ、売り切れです」
「え~?じゃぁ、何がありますか?」
「それが、自動販売機が壊れて…今日はおしまいです」
「はぁ??」
お店屋さんじゃなかったのかい?なんて、ツッコミをいれたくなるような会話。
子ども同士のやり取りって、時にコントみたいにおかしくて…それでいて、会話が成立していてトラブルにならない。笑いは敵をつくらないのですね!
大人同士もこんなユーモアを持ってコミュニケーションを取っていったら、笑顔が溢れるだろうなぁ~
そんなことを思いながら、私は子どもたちの仲間に入りたくて、少しでも子どもたちに近づきたくて、ナンセンス絵本やとんち話の読み聞かせをよくしていました。
笑いは伝染するといいます。ひとりの笑顔がまわりに伝染してみんなが笑顔になる…ステキですよね!
感情を育てるって?
子どもを育てていると、何かが出来るようになったり、知識を身につけたりすることに意識が向いてしまいがちですが…
0歳~6歳までの乳幼児期で一番大事なことは、感情を育てることだと私は思っています。
生まれて間もない赤ちゃんは、快・不快の感情を泣いたり笑ったりして表現し、それをお母さんが受け止めることからコミュニケーションが始まります。
成長と共に、恥ずかしい・悔しい・うらやましいなどの複雑な感情も芽生えてきて、人との関係の中で自分の感情とどう向き合っていくかが、成長のカギになっていきます。
我が家の息子は小さい頃、人前に出ると恥ずかしいという感情でいっぱいになり、顔を真っ赤にしていました。
その当時の私は、「~でなければならない!」という思いに縛られていたので「恥ずかしがっている場合じゃないでしょ!」と、息子の感情を否定しては、がんばることを強制していました。
今思うと、ホントにひどいことをしていたなぁと、息子に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
私が何を言っても変わらない息子の姿に、感情を否定することはプラスにならないと学びました。
それから、どんな感情も「そうだね」と受け止めていく、まさに私にとっての修行が始まりました。
人との関わりの中で様々な感情を味わって、それを誰かに受け止めてもらうことで、自分は自分でいいんだと思えるようになっていく。
子どもの感情をまるっと受け止めていくことが、感情を育てること、心を育てることだと、我が子との関わりを通して実感しました。
そして、そうやって感情が満たされたところにユーモアも生まれるのでは?と、感じるようになりました。
辛いとか悲しいという感情も、ちゃんと受け止めた上で、ユーモアで笑いに変えられたら!
どんなことでも乗り越えていく力になりますよね!
ユーモアって、そんな力があると思うのです。
息子は高校生になった今でも、相変わらず恥ずかしがり屋です。でも、「恥ずかしいからやらない」ではなく「恥ずかしいけどやってみる」に、少しずつ心が成長してきたかなと、見守っている今日この頃。
いつか将来、結婚したいと思う女性に出会ったら、息子も激変したりして!
そんなことを老後の楽しみにしている私です。
ユーモアで乗り超えた夜
仕事と子育てで走り回っていたあの頃…
ある日、大きな台風の影響で電車が止まってしまい、仕事帰りの私は途中で足止めされて帰れなくなってしまいました。
娘が小学一年生、息子は三年生だったと思います。家に電話をすると、外の風雨の音が怖くて「ママ、早く帰って来て!」と娘の泣きそうな声。「テレビは全部台風のニュースばっかりなんだよ」と、息子の心細い声。私も飛んで帰りたいけど帰れない状況で「遠回りでバスで帰るから。2人で仲良く待っててね」と伝えるのがやっとでした。
なんとかバスを乗り継ぎ、いつもの倍時間をかけてようやく家にたどり着いた私。「ただいまー」と部屋に入ると、そこにあった光景は…
なんと、ティッシュペーパーで作ったてるてる坊主が、窓にいくつも貼り付いていたのです!
「雨が止むように、いっぱい作った!」
「兄ちゃんが、作ろうって言ったの。色んな顔にしたんだよ」
「てるてる坊主作ってたから、怖くなかったよ」
そう言って笑う2人を見て、私も大笑い。
2人で心細かっただろうに…でも、そんな時に楽しいことを考えて、2人で笑いながら過ごしていたなんて、すごいじゃん!
笑いながらもなんだか泣きそうだった私。
ユーモアの力、2人の心の成長が嬉しくて…
ティッシュのてるてる坊主にマジックで描いた顔…今でもはっきり覚えています。
一休さんの教え
私が尊敬する偉人といえば、あのとんちで有名な「一休さん」。
有名なとんち話はいくつもありますが、私がすごい!さすが一休さん、と思ったのは亡くなる前に書いた手紙のお話です。
「どうしても困った時に開けなさい」という言葉とともに残した手紙。亡くなって数年後に寺の存亡がかかるほどの問題が起き、困った弟子たちが手紙を開けると…
そこに書かれていたのは
「大丈夫、心配するな。なんとかなる」
という言葉だったのです。
この言葉に弟子たちは、唖然として笑いだし…この手紙のおかげかどうかは?ですけど、問題は無事に解決したとのこと。
「大丈夫、心配するな。なんとかなる」
迷った時や困った時、この言葉を口にすると元気が出て、なんとかならないことはない!と笑顔になる私。
この言葉は我が家の座右の銘になりました。
あなたにとって、力が出る言葉、笑顔になる言葉は何かしら?
まぁ、学校のテストの前に「大丈夫、心配するな。なんとかなる」と言ってる我が子は信用ならないですが…ね。
ユーモアは心の栄養
保育園で出会った子どもたちの中には、いつもイライラして心が乾いているような子が時々いました。
とても忙しそうな両親。子どもに求めていることがたくさんあって、いつも出来ていないところを指摘する会話。そこには、笑いはなかったように思います。
子どもは、結果を求められることがプレッシャーになったり、安心できる場がなかったりするとイライラしてしまうのでは?心の栄養が不足しているのかも?と私は感じていました。
がんばっているのに結果が出ないとイライラしますよね。ですが、子どもも大人も同じです。
そんな時、小さな失敗はネタにして笑い飛ばしてしまう、笑う理由がなくても笑いを作っちゃう、子どもと同じ目線に立って同じ気分を味わっちゃう…
そうやって家庭の中に笑いがあると、子どもは安心してイライラしなくなるのでは?と思います。
ユーモアは心の栄養!
子どもの言葉には、あちこちに笑いが隠れているので、会話の中でそれを見つけて一緒に楽しめたらいいですね。
あなたの笑いのツボは何かしら?子どもと共通の笑いは何かしら?
日々の出来事を面白がって見てみると、大変な子育てもネタになる…そう思います!
今日はどんなことで笑えたかな?
次回は、ユーモアのある子育て『実践編』をお届けします!
●プロフィール
保育・子育てアドバイザー
上野里江
HP:http://smiley-ai.com
保育士歴30年。保育園、幼稚園、子ども園で3000人以上の親子と関わり、その後3年間療育に携わる。
子どもに関わる大人を元気に笑顔に!をモットーに、コミュニケーション講座や相談を行なっている。
上野さん監修の自立を促すしつけシリーズ