絵本の読み方は嘘みたいにシンプルって本当?!
絵本講師の勉強を始めたころの話です。
自分の読み聞かせに対するイメージは、語り部と紙芝居が混ざっていると感じていました。
物語を語ったり、演じたり、パフォーマンスをすることが読み聞かせだと思っていました。
なので、「本は大好きだけど、そう読まないといけないなら読み聞かせはしたくない」と思ってしまっていました。
同じように、「読み聞かせはこうでなければならない!」と、考えてしまっている方はたくさんいるのではないでしょうか?
大好きな絵本を自分の子どもに読み聞かせたいけれど、読み聞かせのイメージがなかなかハードルが高すぎて悩む人もいると思います。
私もそうでしたが、いろんな人の読み聞かせをしている姿を見て勉強をしました。
読み聞かせは大変だなと思っていた私のイメージを変えたのは、ある絵本の1匹のゴリラでした。
心をこめて読めばそれで十分です。
ルース・ボーンスタイン著『ちびゴリラのちびちび』の絵本を知っている方は、たくさんいると思います。
私は小さい頃から自分で何回も読んだ事がありましたが、他の人に読んでもらったのは、私が31歳の時でした。
絵本講師養成講座の第4回の講義の時に、NPO法人【絵本で子育て】センターの森ゆり子理事長が読んで下さいました。
森ゆり子理事長の読み聞かせを見た私は、「この読み方は良いなぁ。この読み方なら自分も読み聞かせしたいなぁ」と思いました。
理事長の講義の中では、絵本について色々なお話を聞くことが出来ましたが、その中でも読み方についてのお話はとても記憶に残りましたし、心に響きました。
養成講座が終わってから2年後の図書館の読み聞かせ会で、1人のお母さんから質問がありました。今でもはっきり覚えています。
生まれてから6ヶ月の赤ちゃんを抱きながら、とても真剣な顔で「どうやって絵本を読めばいいですか?」と聞かれました。その時、理事長のお話を思い出しながら「心をこめて、絵本を読めばそれで十分ですよ」と答えました。
その答えを聞いたお母さんは笑顔になりました。
緊張感が消えて、赤ちゃんにまで伝わって赤ちゃんも笑顔になりました。
私は「いないいないばあ」を赤ちゃんとやりながら、お母さんと絵本について話をしました。
理事長のお話の中にあった「心をこめて、絵本を読めばそれで十分ですよ」という言葉は、嘘みたいにシンプルだけど本当の話です。
普通に、自然に
その時のお母さんみたいに、読み方について悩んでいる方はたくさんいると思います。
読み聞かせと言っても、読み手はたくさんいます。声優さんや女優さんなどの有名人が読む読み聞かせ、作家さん自身が読む読み聞かせ、幼稚園や小学校の先生やボランティアが読む読み聞かせなど、たくさんあります。
専門家や著名人の読み聞かせは楽しいイメージですが、家の中での読み聞かせとはまた違うと思います。
家の中の読み聞かせに一番大事なのは、私は【絵本の読み方】だと思います。
有名な女優さん、俳優さん、声優さんの読み聞かせを聞くと、普通の人は「上手く読み聞かせが出来るか?」不安になりますよね。
出てくるキャラクターの声を全部変えたり、効果音を使ったり、ある意味舞台でのお芝居のような物になっていますから・・・。
なかには、家の中での読み聞かせでも、そのような読み方をする人がいますが、それは間違えではありません。
ただそれを見ると、読み聞かせのハードルがかなり上がってしまいます。ですから普通に心をこめて読めば十分なのだと思います。
これを聞くと「感情を入れちゃダメ」と思う人もいるでしょう。そんなことはありません。
ロボットの様に感情を入れずに絵本を読む必要はありません。普通に読むと自然に気持ちが入るでしょうから、楽しい時は声が上がると思いますし、怖い時は声は低くなりますし、悲しい時には声色も変わると思います。
家の中での絵本の読み方は、映画の見方と似ているところがあると思います。
映画を最後まで黙って一言も喋らない人もいれば、それとは反対にお喋りながら見る人もいます。
これはとても読み聞かせに似ています。絵本を読みながら子どもの質問に答えたり、コミュニケーションをとる人もいますし、絵本を読み終えてからコミュニケーションをとる人もいます。
読み方にルールや決まり事はないので、ママの思ったとおりにしてみてくださいね!
シンプルに
私は、子どもが読み聞かせの途中で質問してきた場合その場で答えます。そこで気になる所があるのなら、私はすぐに答えた方がいいと思うからです。
これは前回のお話し【K S B】のK(気持ち)に繋がります。
例えば、同じ絵本を子どもが何回も持ってきても、読み手があんまり好きではない絵本であっても、どうぞ心をこめて読んであげて下さい。
それが、相手の気持ちに応えることだからです。
じつは私はにも、あんまり好きではない【ある絵本】があります。
以前、職場にいた子どもがその本を持って来た時に、心の中で「またこれ?」と何回も思いました。そう思いながら中途半端な気持ちで読むと、子どもから「ちゃんと読んでね」と言われるか、その絵本を違う人に持って行ってしまう事もありました。
子どもは色んな場面で敏感だと思います。読み手がピリピリしていると、聞き手に伝わったりします。
出来るだけ「絵本の時間」は落ち着いて、楽しい時間にしませんか?
読み聞かせの時、聞き手は絵を見て話を聞きます。
読み手は心をこめて、文字を読みます。
とてもシンプルなことですが、聞き手と読み手の役割はハッキリしています。
このように考えると、家の中の読み聞かせはもっと楽しいものになって、笑顔も増えることでしょう。
プロフィール
アメリカ、カリフォルニア州出身。
大学で日本語と日本文学を学ぶ。
13年の子ども英語講師の経験。
NPO法人「絵本で子育て」センター認定講師。全国で「バイリンガルおはなしかい」絵本講座を開催。
「えいごのじかん2」、「えいごのじかん3」(鈴木出版)のバイリンガル絵本シリーズの英訳担当。
小澤俊夫のむかし話大学を卒業。
「セサミストリート」絵本(イマジネーション・プラス)シリーズの日本語訳担当
「セサミストリート」絵本シリーズの日本語訳担当