働く人の裏側が見える絵本で行動が変わる!

もうすぐ小学生になる息子。幼稚園でも卒園に向けて「大きくなったら何になりたいですか」という話が多く話題に上がる時期。帰りの自転車でも「僕は○○になる!」と、うれしそうに話してくれます。ただ、○○になりたいと話すものの、なりたい職業は複数で、そのほかの職業も気になる様子。そんな興味の種を広げられる絵本はないかと探していたときに出会ったのが、今回ご紹介する絵本です。読んでみると、ユーモアあふれる仕掛けやリアルな描写に引き込まれた私も思わず夢中に!
全部で6巻の大人気「しごとば」シリーズ

「続 しごとば」
作:鈴木のりたけ
発行所:ブロンズ新社
9つの職業について、仕事の現場が細かく描かれています。その仕事で使う道具から、どんな仕事をしているのかを詳しく紹介。職業によっては、その日1日にその仕事をしている流れが書かれているものも。
とうふ屋からプロ野球選手まで、さまざまな職業が紹介されていますが、一番最後は宇宙飛行士。4か月にもわたる宇宙生活の様子が事細かく描かれており、ほかの職業よりも2ページ分多くなっています。そしてユニークなのが最終ページ。それぞれの職業に就いている人の休日の様子が紹介されていて、日頃の緊張感あふれる仕事場での様子とは違った人間らしい休日が描かれていて、くすっと笑えるページになっています。
表紙にある獣医さんのリアルな「仕事場」に目が釘付け

息子はある日、幼稚園からの帰り道で「今日、“大きくなったら何になりたいですか”と先生に聞かれたから、“獣医さんか研究者か科学者になりたいけどまだ決まってない”って答えたの」と教えてくれました。なぜ迷っているのかと聞くと「どれもおもしろそうだから。でも何をしているか見たことがないからよく分からないし、迷っちゃう」という回答。
確かに、私も自分が経験した職業以外について、詳しく知る機会は今まで一度もありません。だからこそ、知らなかったことがたくさん描かれているこの絵本は実に興味深い内容。
この「しごとば」シリーズは全6巻あり、全部で54の職業について描かれています。絵本の作者である鈴木さんは、全ての職業についてきちんと取材をした後に再現しているとのことで、細かい部分まで実にリアルに描かれています。本屋さんに並んだこの「しごとばシリーズ」の6冊の中から息子が迷わず選んだのは、表紙に獣医さんの仕事場が描かれた「続 しごとば」です。
獣医師から入った結果、考古学者に興味津々!

獣医師というと「さまざまな生き物を助けられる」という面だけがクローズアップされがちですが、絵本には「出勤したらまず診察前に、1匹ずつ先生が(健康チェックのため)散歩をする」「おしっこやうんちの様子も観察」「お昼ご飯は手術が無事に終わったあとの15時半」など、それ以外の仕事の内容も詳しく書いてあります。「こんなにやることがあるの?これも先生のお役目?」と驚いた様子。「僕がよく知っている、診察や治療をしているかっこいい姿の裏にはこんな苦労がある」ことを学んだようです。
研究者や学者にも興味があった息子は、次に考古学者のページを熟読。かなり地味な作業ではあるけれども「僕が大発見をしたら博物館に飾ってもらえる」ということを知って感動。息子なりの「かっこいい」部分をこの職業から見出したのだと思います。

最後には「たくさんのお客さんが大発見を熱心に見てくれている」と締めくくられたページが心に響いたのか、学者や研究者への興味が加速。本人の希望からその週末は博物館に出かけましたが、さまざまな研究者の大発見を、絵本の中に描かれている人と同じように熱心に見入っていました。
帰宅してからは、また考古学者のページを熟読。きれいに整った仕事場ではなく、床に無造作に置かれた出土品、図面、動物の骨・・・といった雑然とした空間の中が書かれていて、まるで図鑑のよう。置いてあるものひとつひとつに名前が書かれており、大人の私もつい見入ってしまいます。何回読み返しても、毎回新しい発見があるようで、息子は特に人骨とタヌキの骨に目が釘付けになっていました(笑)。
仕事の裏側をのぞくことで世界も広がる

ひとくくりに「獣医師」「学者」といっても「どの仕事も、目に見えていること以外にもこれだけのことをやっている」と分かるのが、この絵本の大きな魅力です。「パパもママも(いつも見ている部分以外にもたくさんのことをこなしていて)働くっておもしろそうだけど大変なんだね」と、ちょっと大人びた感想が息子の口から聞けたことにも驚きでした。

最終的に地味で大変そうでも「かっこいい」学者の姿を知り、かっこよくなるためには努力が必要なんだと、少しでも理解した様子の息子。以前は「朝ごはんの後にお勉強したら」と助言をしても、全く聞き入れなかったにもかかわらず、朝食の後に画用紙を自ら開いて、まだまだ苦手なひらがなやカタカナ、足し算の勉強を熱心にしていてびっくり!
興味を持ったことのためなら、自分から進んで努力できる強さが息子にもあることを発見。幼稚園も年長になると自己主張がより強くなり、つい口を出しがちになってしまうのですが、親は「本人のやる気や興味を引き出す手助けをしてあげることが大切」と身を持って実感。そんな興味を引き出してくれる「しごとば」は、シリーズで揃えたくなります。ぜひ、お子さんが気になる職業が載っている一冊を手に取ってみてはいかがでしょうか。