世界でおきていることを自分ごとに。息子の行動を変えた1冊
毎日何気なくつけているテレビから流れる、さまざまなニュース。最近は必ずと言っていいほど、ウクライナとロシアの戦争など、さまざまな争いごとが報じられています。幼稚園で国旗の画を描くなど、さまざまな国に興味を持ち始めた幼稚園生で6才になる息子は、そのニュースが流れると「どうして戦争をしているの?」と質問をしてきます。
世界で起きているニュースに、いろいろな疑問や興味を持ってみるようになった息子。その質問内容がまだ幼稚園児には難しいから何も教えないのではなく、「どうしたら分かりやすく世界のことを自分ごととして考えるきっかけになるか」を考え、「せかいちずえほん」を6才の誕生日にプレゼントしました。今回は、この本をきっかけに、考えや行動が変わった息子のことをお話します。
絵本の中で世界中を探検できる!
著者:アレックス・フリス
絵:ケイト・リーク
出版社:学研マーケティング
世界を7つに分けた地図に、さまざまな建築物、自然、動物、言語といったその土地を象徴するものが描かれた、子どもから大人まで楽しめる絵本。それぞれの地域の地図が描かれたページにはめくれる扉がついていて、さまざまな情報が書いてあります。
子どもの興味を伸ばしてくれる楽しい仕掛けがたくさん詰まっていて、パラパラとめくっているだけでもワクワクする気持ちに。最終ページには大きな世界地図までついているので、さまざまな楽しみ方ができる1冊です。
興味のあるものを見つけながら読み進められる
もともと、虫や動物といった生き物が大好きな息子。この絵本には地図上にさまざまな生き物も描かれているので、本をプレゼントした日には大好きな生き物が載っているページを食い入るように見つめていました。
大好きな生き物のひとつが、コウテイペンギン。名古屋港水族館で「コウテイペンギン」に出会った息子は、ほかのペンギンよりもふっくらとしたお腹と、その大きさに魅力を感じたのか、一目見て気に入っていたのでお土産として小さなぬいぐるみを購入。水族館で聞いた飼育員さんの説明の中で「コウテイペンギンは南極にいる」という話を覚えていて、南極のページを開くと、コウテイペンギンが描かれているのを発見して大興奮。
持っていた知識を絵本を見て目で確認することで、さらに身近に感じたよう。その南極のページの扉の中にある情報を、ひたすら読み込んでいました。
次第にほかの地域にも興味を持つように
一番最初は好きなものが書いてある地域のページだけを繰り返し開いていましたが、裏表紙に書いてある「どこにあるかな?」と書いてある内容の場所を自分で探したことがきっかけで、ほかの地域のページにも興味を持ったのか開くように。すると、日本はアジアの中にあることを発見。「日本ってこんなに小さい島なんだ」と驚くとともに、「ママ、日本があるアジアの中に、ロシアがある!」と興奮気味に知らせてくれました。
ニュースでさかんに出てくる、「戦争をしているロシア」のことを息子はよく覚えていて、その国が日本と同じアジアに属していることを発見。テレビに映っている遠い国の戦争の話が、次男の中で他人事ではなくなった瞬間でした。
この絵本には、最後のページに世界の国旗も描かれた大きな地図が付属しています。絵本の中でさまざまな国のたくさんの情報をインプットしたら、この大きな地図で国の位置を再確認。「世界にはたくさん国があるけれど、こうやってみるとひとつに見えるね」という子どもの素直な意見に、「世界はひとつという言葉の意味はこういうことか」と大人の私も思わず納得。
今日も、夕飯を作りながら息子と一緒に観るニュースには、空爆で家を失って、砂埃で汚れてしまっている息子と同じような年齢の子どもの姿が映っていました。それを見て息子は、「この子たちはおうちもなくて、ごはんはどこで食べるの?」と一言。「おうちも食べるごはんもなくなって、困っているんだよ」と話すと、「世界はひとつだから、助けてあげたいけど、僕には無理そうだから、食べられないお友達の分も、まずごはんを残さないように食べる」と言って、いつもこっそり残そうとするきのこを、自ら口に入れて完食。
きのこを残さず、自分できれいに食べたのはこれが初めてでした。さらに次の日はお茶碗中のご飯粒を一粒も残さないように、お箸を使って一生懸命口に運んでいました。
ニュースを見て「遠い国の関係ない話」と思うのではなく、世界はひとつだから、自分にも関係のある話であること。この絵本を見ていると、そんな大切なことを実感するとともに、子どもも楽しみながら世界の国々に興味を持つことができます。
そして、同じ世界で起きているできごとに対して目を背けず、息子なりに今の自分に出来ることを探すという想定外の行動を見て、世界を変える力はこうした小さなことから生まれるのだと感じました。いつかこの絵本に描いてある世界の国々を息子自身の目で見て、自らの肌で実感できる機会を作りたいと思っています。