イヤイヤ期の「ママ・パパ嫌い!」に隠された意味とは?原因と上手な対応法
おおむね2歳ごろになると、多くのパパ・ママが対応に悩んでしまう「イヤイヤ期」。ささいなことにも抵抗を示し、なにかとあれば泣きわめく……その姿は、「魔の2歳児」と称されるほど。そんなイヤイヤ期真っ盛りな2歳児の言動のなかでも、とくに保護者を戸惑わせるのが「パパ嫌い!」「ママ嫌い!」という言葉です。
愛する我が子からのそんなひとことがパパ・ママに与えるダメージは大きく、「自分の育て方が悪かったのだろうか……」「これってもしかして愛情不足?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
今回はイヤイヤ期に多い「パパ・ママ嫌い!」が生じる原因と、その言葉の裏に隠された本当の意味を紐解いていきます。
親を深く傷つける「パパ・ママ嫌い!」という言葉
はじめのうちは「子どもの言うことなのだから」と気に留めずにいられても、「嫌い」「大っ嫌い!」などと何度も繰り返し言われると、パパもママもストレスが溜まり、ついイライラしてしまいがちです。
「そんなことを言わないの!」「嫌いなんて言う子はパパもママも嫌いです!」などとつい声を荒げてしまい、あとになってひどく落ち込んでしまう……そんな経験があるパパやママも少なくないのではないでしょうか。
あまりに「嫌い」と言われる頻度が高かったり、言われている期間が長かったりすると育児に対して自信をなくしてしまい、頭の片隅に「愛情不足」の4文字がよぎってしまうことも……。
しかし、子どもが「嫌い!」と言う原因は、決してパパやママの愛情不足や育て方の問題ではありません。ここからはその原因について、くわしく紹介していきましょう。
【原因1】自我の発達
「パパ・ママ嫌い!」という発言がもっとも多くみられるのは、この自我の芽生え・発達期においてでしょう。
これまでお世話をしてもらうという“受け身”の生活であった子どもが、やりたいこと・やりたくないことをはっきりと主張するようになる……しかしながら危険なことや補助が必要な部分は、親としてその要求をすべて受け入れるわけにはいきません。それゆえに大人との意識の乖離が生まれ、それが「イヤ!」「嫌い!」という表現として現れるのです。
「パパ嫌い」「ママ嫌い」という言葉が出ることは、子ども達の自我がきちんと発達してきている証拠。必ずしもその行動を悪いものとして捉える必要はありません。
【原因2】未発達な言語能力
しかし、まだ自分の抱いている感情を言葉で完璧に表現したり、要求を細かく言葉で伝えることはできません。「自分はこうしたい」「これは今はしたくないんだ」そんな気持ちをどうにか言葉で表現したいけれど、うまくできない……。そこで出てくるのが「嫌い」という言葉です。
言葉をうまく扱い、感情をコントロールすることのできる大人であっても、他者に自分の気持ちを説明するのはとても難しいことでしょう。ときには最適な表現を絞りだすよりも前に感情が高ぶってしまい、安易な言葉を口走ってしまった経験は、誰しもが持っているのではないでしょうか。
まだ語彙が少なく、その使い方を習得している段階の子ども達は、いわばそんな葛藤に常にさらされている状態です。「嫌い」という言葉を使えば、大人たちが強い反応を示してくれる。自分のことを見てくれる……。それを経験から知っている子ども達は、自分の気持ちを分かってほしいがために「嫌い」という言葉を発するのです。
【原因3】試し行動
この「試し行動」が生じることにはさまざまな理由があります。大人たちの愛情をはかってみたい、気を引くための方法がわからない、環境の変化に対して不安をかかえている……。しかしその行動には「信頼関係を築いていきたい」という子ども達の気持ちが隠れています。
パパやママに対してわざと「嫌い!」という言葉を使う場合には、甘えたい存在だからこそ愛情を確かめたい、自分のことを見てほしい、どんな自分であっても認めてほしいという心情が表れているということが考えられます。
「パパ・ママ嫌い!」への上手な対処法とは?
【対処法1】子どもの気持ちを満足させる
先に紹介したとおり、「嫌い」という言葉の裏には子ども自身の「こうしたい・これはしたくない」という感情と、今おかれている状況とのミスマッチがあることが考えられます。
だからこそ、たとえば「遊んでいないでご飯を食べなさい!」と叱るのではなく、あらかじめ時間的な余裕をもって声掛けをし、遊びがひと段落したところで食事に誘う、1枚の服を「着なさい!」と与えるのではなく「これとあれ、どちらのお洋服が着たい?」と選択肢を与えてあげるなど、子どもが満足して次の行動に移れるように工夫するとよいでしょう。
【対処法2】気持ちを代弁してあげる
言葉が未熟なために「嫌い!」という言葉が出てしまっている場合には、子どもの気持ちをきちんと言葉にして伝えてあげることも大切です。「もっと遊んでいたかったんだね」「これじゃなくてこっちの洋服がよかったんだね」など、「嫌い」の理由を言語化してあげたうえで「そういう時は『嫌い』じゃなくて『○○して』って言えばいいんだよ」と、子どもの欲求を言葉でうまく伝える方法を教えてあげましょう。
教えたからと言ってすぐにできるようになるわけではなく、ある程度根気が必要ですが、「こういうときはこう言えばいいんだ」ということを子どもが学んでいくきっかけになるはずです。
【対処法3】それでも「大好きだよ」と伝える
「嫌い!」と言われるとカッとなり、とっさに「じゃあパパも!」「ママも!」と言ってしまいそうになることもあるでしょう。しかしここはぐっとこらえて。
「○○くんは嫌いでも、パパ/ママは○○くんのことが大好きだよ」と伝えてあげましょう。
どんな自分であっても認めて愛してくれる存在がいる……そのことは、子ども達に心の安定をもたらし、子どもの自己肯定感を高めることにもつながります。「嫌い」と言う回数を減らすために役立つだけではなく、子ども達のこれからの心の育ちにとっても大変意味のある経験となるでしょう。
【対処法4】ときにはあえて反応しないことも……
とはいえ、なにかあるたびに言い放たれる「嫌い」の言葉に対し、常に冷静に穏やかに対応することはとても難しいことです。
また、子どもがパパやママの気を引くために「嫌い」という言葉を使っている場合は、紹介してきた対処法を用いてもなかなか状況が改善しないということもあるでしょう。
もしも「嫌い!」という言葉と真正面から向き合うことがつらくなってしまった際は、思い切って強く反応することをやめることもひとつの方法です。「そういうことを言われると悲しいよ」と、声色や表情を大きく変えずに淡々と伝える、そして感情が高ぶってしまいそうなときには、ほんの少し、子どもと距離をとってみましょう。
すると子ども達は「この方法ではパパやママの気持ちを自分に向けることはできないんだ」ということが徐々にわかってきます。「嫌い
」という言葉がパパ・ママを悲しませるということも理解できるようになってくるでしょう。
あなたの子育てはあなただけのもの
我が子の「嫌い」という言葉を受けて周囲から「愛情不足なんじゃないの?」「もっと一緒に過ごす時間を作ってあげたほうがいいのでは?」と言われることもあるでしょう。インターネットで情報を探すなかで、自分の子育てに自信がなくなってしまうこともあるかもしれません。
しかしながら、あなたの子育てはほかの誰でもない、あなただけのもの。保護者であるあなたも、お子さんもこの世にたったひとりの存在なのですから、マニュアルどおり、ほかと同じように育児が進められるはずがありません。
どうかお子さんを信じ、ご自身の子どもに対する愛情に自信を持ってください。そのことは「嫌い」を解消するために、もっとも大切な土台となることでしょう。
執筆後記
ちょうど下の子もイヤイヤ期に差し掛かり、毎日2人から「嫌い!」の嵐……。仕事に家事にてんてこまいのなかでストレスが溜まり、適切な対処をできないこともあります。
しかし、筆者個人としては「それでもいい」と思っています。だって、パパやママだってひとりの人間ですから。
必死に子育てをしているがゆえに、ときにはうまくいかないこともある。でもそれでも愛情をもって前に進もうとする……その姿勢を見せることも、ひとつの「子育て」なのではないでしょうか。
子ども達の「嫌い」という発言を減らすには、多くの時間が必要です。ときには悩んだり深く考えることをやめ、息抜きをしながら、気長に取り組んでいきましょう。
この記事を読んでくださったパパ・ママの育児生活が、有意義で幸せなものであることを願って……。