保育・子育てアドバイザー 研究員の上野里江です。
今回は『がんばりすぎない子育て』コラム第10作目!
私が子育てで一番大切にしている『親子で笑い合う』ことについて。
どんなに優しいあなたでも、毎日子どもと向き合っているとイライラして怒りたくなることがありますよね。言った通りにはならないし、何回言っても分からないし…
でもね。
子育てのゴールは子どもの自立。
子どもを何とかしようと頑張るより、子どもと一緒に楽しんだほうが親子の時間は豊かになる。
そんな実体験から、ユーモアは子育てに大事だなぁ~と感じています。
そこで今回は、親子で笑い合うってどうやるの?
そんな声にお応えする『実践編です』!
YES/NOでは答えられない会話をしよう
毎日の会話の中にユーモアを取り入れて…
とはいうものの、忙しい時に冗談なんて言っていられませんよね。
「おはよう」
「早くご飯食べて!」
「まだ着替えてないの?」
「ほら、行くよ!」「アレ、持った?」などなど。
これは、我が子が小さい頃の私の声がけ。
「指示」と「確認」ばかりだったなぁと、今さらながら反省しています。
子ども側から見てみると「はい」って返事しないと怒られる~!って、感じていたことでしょう。
「親子で笑い合う」からは、ほど遠かったあの頃。
子どもために、という気持ちで頑張っていた私ですが、子どものためにはなっていなかった!
親子の信頼関係って、親子なんだからあるに決まっていると思っていたら大間違い。
子どもは、お母さんの言葉や態度に傷つき、あきらめ、拒否することもあることを知り、日々の積み重ねこそが親子関係を作っていくのだと、あらためて気づきました。
そこで「指示」と「確認」を、「一緒に~しよう!」に変えて
「早くご飯食べよう~」
「一緒に着替えよう~」
と声をかけると、子どもたちの笑顔が増えたように感じました。
さらにここで、YES/NOで答えられない会話をたくさんするように心がけました。
「今日楽しかった?」と聞くと、子どもは「うん、楽しかった」と答えますよね。会話はすぐ終わってしまいます。
そこで「今日一番楽しかったことはな~に?」と聞くと、「えっと、公園で遊んだこと!」なんて答えてくれて、その後も「公園で何して遊んだのが一番面白かった?」と、質問を重ねていくと、身振り手振りで楽しかったことを伝えてくれるようになったのです。
子どもはお母さんに自分の話を聞いてもらうことが大好き。
でも、聞かれないとなかなか自分からは話さないものなのです。
子どもの興味のあること、行きたいところ、食べたいものなど。子どもの話すことはすべて?をつけて聞いてみる。
さらに、子どもの発想を面白がって「へ~っ、そんなこと考えてるんだ」とうなづいたり、あいづちを打ったり、時には女優になってオーバーリアクション(これもユーモア!)で話を盛り上げていくと、きっと笑い合えること間違いなしです。
お母さんのビックリした顔を見ると子どもは嬉しくて、得意になって話し続けます。
子どもが自分の話を安心して話せる、ということは心の成長にも繋がっていきすよ。
モアイに会いたい…
息子が6歳の頃。
TVで見たのがきっかけだったのか?息子はイースター島のモアイに魅せられて、モアイのことで頭がいっぱいになりました。
モアイのどこが何が息子の心に響いたのかは分かりませんが、6歳の息子にとってあの大きなモアイ像は不思議な憧れでいっぱいだったようです。
その年のクリスマスは「モアイの写真集が欲しいです」とサンタクロースにお願し、自作「モアイにあいたい」という鉛筆で描いた紙芝居まで作った息子。
一緒に楽しまなきゃもったいない!と私にもスイッチが入り、息子のモアイ熱のおかげでそれまで知らなかったモアイの歴史などを知りました。
思い起こすとあの頃、何よりも楽しかったのが息子とたくさん会話をしたこと。
「モアイって顔が違うね!どれが好き?」
「もしも、モアイ会ったら何話したい?」
「モアイが動いたらどうなるのかな?」
「おみやげはどんなものがあるのかな?」
「ひとりで行くの?ママも連れてって~」などなど。
YES/NOでは答えられない会話をすることで、息子が何を考えてどんなことを感じているのか?ということがとても良く伝わってきました。
何を言っても大丈夫、という安心感が積み重なると、それは信頼感になり、親子で笑い合えるようになっていくのだと実感しました。
子ども自身、質問に答えながら自分の気持ちに気づいていくようにも感じた親子の会話。子どもにとって、お母さんとの会話はコミュニケーションのはじめの一歩になっているようです。
安心感と信頼感が増えると、子どもは心から安心します。
するとそこには、たくさんの笑いが生まれますよ!
スキンシップは心をくすぐるユーモア
笑顔を見ているだけでこちらも癒される赤ちゃん。赤ちゃんを笑わせるには面白い顔したりくすぐったりしますよね。
そんな赤ちゃんは、知らない人にもニコニコ笑顔を振りまいてくれるのですが、だんだんと成長し子どもになると本当に楽しい時や面白い時しか笑わなくなります。知らない人に声をかけられても、ニコリともしないのは成長している証拠。
子どもって、愛想笑いはしないのです。
そこで、大きくなってきたら『スキンシップ+心をくすぐるユーモア』の出番です!
お母さんの普通の顔を見て、「怖い」「怒ってる」と感じる子もいると聞いたことがあります。普通の顔をしてるだけで怖い顔なんて失礼しちゃうわ!とも思いますが…
やっぱり笑顔が一番ホッとするのでしょうね。
そこで、笑顔になるのに効果的なのが、スキンシップ+ユーモア!
例えば、背中に文字や数字を書いて当てっこする遊びは、くすぐったくて面白い!
ジャンケンやあっち向いてホイ!にらめっこなども道具なしで笑える遊び。
「♪せっせせ~のよいよいよい♬」で、手をつないで一緒に歌うと自然と笑顔が溢れます。
お母さんと笑い合う時間は子どもにとって一番のリラックスタイムになるのです。
5歳、6歳になったらダジャレの面白さも分かるようになるので、知恵を絞って子どもにウケるダジャレを考えてみるのもいいですね。
面白いこと考えているだけでニヤニヤ笑うようになったら、あなたは上級者!
子どもを笑わせるって、先に自分が笑うことからはじまります。笑いは伝染するのです。
是非、身近にたくさんある笑えるネタを拾い集めてみて下さいね。5分でもOKです。子どもと一緒に楽しんでみて下さい!
失敗を笑い飛ばそう
時々、財布を忘れて買い物に出かけてしまう私。レジに並んで「はっ!」と、財布がないことに気づき、慌てて品物を元に戻して家に帰る…
子どもたちには「何やってるの~?」「信じられない」と呆れられています。
そんな時は、財布を忘れてゆかいな~♪と、歌ってごまかします。
「サザエさんと同じじゃん!」と突っこまれて一緒に笑う。ホッ。
駅の階段を上っている時、前から駆け下りてくる人にぶつかり、足を踏み外して落ちそうになった私。とっさに、目の前にいた人のリュックをつかんでしまった…!そのリュックの人がグッと踏ん張ってくれたから助かったけど、びっくりした顔で振り返ったのは若いお兄さん。
恥ずかしくて平謝りの私。そんな話を子どもたちにすると「恥ずかしい~」「でも、落ちなくて良かったね」と、笑ってくれてホッ。
失敗も失態も?ネタにして笑ってしまうと、その時は大変だったけど何とかなるものだと思えてきます。
子どもたちがこの先の人生で、大変なことや思い通りにならないことに出会った時、真剣に向き合うことは大切だけど、深刻にはならないで欲しいなという願いを込めて。
ユーモアで笑い飛ばすことの大切さを伝えていきたいと思っています。
正しさより楽しさを
以前保育園で、3歳の男の子のお母さんが連絡帳に書いてきた今でも思い出すエピソードがあります。
その男の子の家は平屋の一戸建て。ある日のお散歩で友だちが「アレ、ボクのお家だよ」と、マンションを指さしました。それを見た男の子は「わぁ、大きなお家。いいなぁ~」と思ったようで、保育園の帰り道お母さんに尋ねたそうです。
「何でボクのお家は小さいの?」「○○君のお家は、お城みたいに大きいお家なんだよ!」と。
お母さんは何のことだかサッパリわからなかったのですが、友だちのマンションの前を通りかかり「ここ、○○君のお家」「ボクも、こんな大きなお城みたいなお家がいい!」と言うのを聞いて、「お城」とは「マンション」のことだとわかったそうです。
そこでお母さんは、男の子にマンションの説明を始めました。
「あれはね。お城じゃなくてマンションって言うのよ。○○君のお家は、あのマンションの中のひとつのお部屋だけで、あのマンション全部が○○君のお家じゃないのよ」「きっと○○君のお家より、あなたのお家のほうが広いと思うわ」などなど…
男の子は、お母さんの話に頭の中が混乱してしまったようで「お城がいい~!」と道で泣き出してしまったとのことでした。
この話あなたは、どう感じますか?
お母さんは何も間違ったことは言っていないのです。正しいことを教えているだけですものね。
でも、男の子の気持ちを考えてみると、どうでしょう?
男の子の思いは、受け止めてもらっていないかも?と私は感じます。
マンションのことを「お城」と表現した男の子の感性も、受け止めてもらっていない。
お母さんは正しいことを教えているだけですが、子どもが求めているのは正しい答えではなく「そうだね」「お城みたいだね」「ママもお城に住みたいわ~」そんな楽しい会話をしたかったのでは?と思います。
もちろん、正しいことを教えるのは大切です。
でも、もしかしたらそのお母さんは、日々時間に追われて子どもとの会話を楽しむ気持ちの余裕がなかったのかもしれません。
正しさと楽しさ…
本当は、楽しく正しいことを伝えられたら一番いいのかも。それにはやっぱりユーモアだ!そんなことを思った私です。
あなたは、どう思いますか?
お母さんの通信簿
今から6年前の冬。小学生だった息子と娘は冬休みを2人で過ごしていました。私が仕事から帰ると「今日は、ママにいいものあげるね!」と娘。
「はい」と手渡してくれたのは「つうしんぼ」
自分達が小学校でもらってきた通信簿を見ながら、線を引いて項目を作って、私に「つうしんぼ」を作ってくれたのです。
何とも、そんなことを思いつく2人に笑ってしまったのですが、その評価がまた面白い!
娘の考えた評価軸には
「パパへのやさしさ」
「りょうりのこと」
「やっぱり元気か」
なんてものがあり、おおむね「よくできる」に〇
息子の考えた評価軸には
「言葉使いが正しい」
「相手の理解しやすいように話す」という項目があり、ABCの「C」がついていました。
さらに「しつこく、うるさい」に〇がついていて、厳しいダメ出し!
きっと、私の言うことに納得がいかなかったり、分かってもらえない!と思うことがあったのでしょうね。
ちょっぴりムッとしたのですが(笑)、そんな評価を私に伝えることができるようになったんだと思うと、なかなかやるねぇ~と感心しました。
娘から「やまんばのように怖い」と言われた私が、機嫌のいいお母さんを目指して、自分の弱いところもダメダメなところも見せながら奮闘していたあの頃。イライラして子どもとぶつかることも多々あったけど。
子どもに育ててもらって、母として成長させてもらってる…
子育てって、自分育てでもあるんだなぁ、と実感しています。
息子と娘からもらった通信簿。
ユーモアにあふれた2人からのメッセージは宝物です。
ユーモアは技術
ユーモアは持って生まれたものではない、と私は思います。
漫才や落語も、ちゃんと計算された笑いを作っていますものね。
「あの人、ユーモアセンスがあるよね!」と言われる人は、顔の表情が豊かだったり、たとえば話が上手だったり、日々の積み重ねで身についた笑いの技術を持っているように感じます。
同じ物事を見ても、感じ方や捉え方は人それぞれ違うのですが、ユーモアのある人は笑えるほうに、楽しいほうに捉える技術が身についているのだと思うのです。
ということは…今からでもユーモアを身につけることは出来る!
だって、ユーモアは技術ですから。
自分がいつも使う言葉に「だって」「でも」「どうせ」という3Dの言葉がないかチェックして、マイナスの言葉をプラスに変換。
「まるで~のようだね」「きっと~になるよ」といった言葉を口にしてみると、何だか自分自身も楽しくなってきます。
物事の事実はひとつでも、どう捉えるかはその人次第。
ユーモアは、親子関係だけでなく自分自身の人生も豊かに楽にしてくれます。
さらに、笑いは免疫力を高める効果がある!という実験結果もあるとのこと。
確かに。
「絶対にうちの子はインフルエンザにかかりません!」「笑ってる人にウイルスは入ってこない!」という私の言葉を信じている?息子と娘。隣の席の子がインフルエンザになっても、学級閉鎖になっても、ホントにかからないのです。
もしかしたら、ユーモアが身体にしみ込むと風邪も引かなくなるかも?ね。
子育ての今を楽しんで!
母になって16年。
トナカイの衣装を着て笑っていた息子も16歳。
あの頃は、クリスマスの歌を一緒に歌って踊っていたなぁ~。サンタクロースを信じてプレゼントを本気で喜んでいたかわいい2人。
時々我が子の小さかった頃の写真を見ては、いま目の前にいる思春期真っ只中の息子と娘を愛おしく思う私。
あの頃は、こんなに大きくなるなんて想像もしていなかったなぁ。
我が子が小さかった頃の悩みや不安…色々あったけど、何とかなって今があるように思います。
失敗も困ったこともあったけど、取り返しのつかない失敗なんてないのかも?とも思っています。
まだうちの子は小さいから、なんて思っているあなた!
子どもって、あっという間に成長しますよ~。
だからこそ、今、笑い合える楽しい時間を過ごしてくださいね!
身体の成長と共に心が成長する乳幼児期は、何かが出来ることより大切なのが安心感。
日々の笑い合う時間の積み重ねが安心感になり、親子の絆になり、子どもの生きる力になっていく。
それにはまず、お母さん自身が楽しいと思う時間を過ごしてくださいね。
お母さんの笑顔が、子どもの笑顔の元ですから!
このコラムがあなたの子育てにお役に立てたら幸いです。
●プロフィール
保育・子育てアドバイザー
上野里江
HP:http://smiley-ai.com
保育士歴30年。保育園、幼稚園、子ども園で3000人以上の親子と関わり、その後3年間療育に携わる。
子どもに関わる大人を元気に笑顔に!をモットーに、コミュニケーション講座や相談を行なっている。
上野さん監修の自立を促すしつけシリーズ
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