自信を持って伝えよう!お母さんのことばはすごい力

保育・子育てアドバイザー 研究員の上野里江です。

前回お伝えした、子どもの心の栄養になることば 「大好き」。

毎日の生活の中に取り入れてみて、いかがでしたでしょうか?

子どもと一緒に笑い合う時間が増えたのでは?

子どもの心を育てることば第二回目は、「子どもに喜びを与えることば」をお届けします。

 

「ありがとう」って言えるかな?

ある日のスーパーのレジでのこと。

2歳ぐらいの男の子がお菓子をひとつ握りしめて、お母さんと一緒に並んでいました。
順番がきてレジ係にお菓子を手渡した男の子。そして、レジ係から「はい、どうぞ。」と、お菓子を渡されて嬉しそうにしていました。

すると、すぐにお母さんの声…

「ほら、なんて言うの?」「ちゃんと、ありがとうは?」「ありがとうでしょ!」

男の子はもじもじ…お母さんはイライラ!

男の子は、下を向きながら小さな声で「…がと。」と言っていましたが…
お母さんは、ちょっと怖い顔。

あなたもそんな経験ありませんか?

 

「ありがとう」を伝えよう

感謝のことば「ありがとう」

子どもには、ちゃんと言えるようになって欲しいですよね。

でも、「ありがとう」は使い方を教える前に、大切なことがあると思うのです。

 

それは、たくさんの「ありがとう」を子どもに伝えること!

 

子どもって、言った通りにはならないけど、大人のしている通りになるのです。

お母さんが「ありがとう」を子どもに伝えることで、自然と身についていく「ありがとう」のことば。

「えっ?子どもに感謝するなんて?」「感謝されるのは、こっちのほうよ」そんな声が聞こえてきそうですが…
お母さんの気持ち、よくわかります。

子どものために心も時間もフルに使っているお母さんにこそ…本当に「ありがとう」です。

 

それでも私は、子どもって何よりも有難い存在だと思うのです。

産まれてきてくれた…ただそれだけで、ありがとう!

そう思いませんか?

 

喜びは、生きる力

2歳ぐらいになると、ままごと遊びでお母さんのまねをしてお料理をする姿が見られますよね。
お皿に玩具の食べ物をのせたり、コップにお茶を入れるまねをしたり。

そして「ハイ、どーぞ」と、笑顔でお母さんの前に差し出してくれるかわいい我が子…

その時、どんなことばをかけていますか?

「わぁ、おいしそう!」「いただきます」そんなお母さんのことばは、どれもうれしいけど…
そこで一番伝えて欲しいのは「ありがとう」のことばなのです。

自分の差し出したものをお母さんが喜んでくれた!というのは、自分という存在が、お母さんにとって「ありがとう」の存在なんだって思えるのです。

子どもの心に喜びを与える「ありがとう」のことばは、生きる力になっていく!

私はそう思っています。

 

子どもの気持ちをのぞいてみると…

保育園では、遅くまで仕事をしているお母さんのために延長保育があります。

ある日の夕方。延長保育の友だちがひとり、ふたりと帰って、最後のひとりになったのが4歳の男の子でした。

走って迎えに来たお母さんを見てパッとうれしそうな顔をしたのですが、次の瞬間「ごめんねー!遅くなって」というお母さんの声を聞いたとたん知らん顔をして遊び続けたのです。

お母さんはイライラ!「もう、早くしてよ。急いで来たのに…おいていくよ!」

そのことばに男の子はムッとして玩具をバラバラに…

そしてお母さんは激怒!

一日の終わりが悲しい時間になってしまいました。

本当は、最後のひとりになって、心細くて寂しくてずっと待っていたはずなのに…なぜ素直になれなかったのか?

それは、お母さんのことばにあったのです。

 

「ごめんね」を「ありがとう」にかえて

男の子は、お母さんが仕事を頑張っていることも、急いで迎えにきてくれていることも、ちゃんとわかっているんです。
だからこそ、男の子なりに我慢していることもある…その気持ちをお母さんにくみ取って欲しかったのだと思います。

その後、男の子の気持ちについてお母さんと話をしました。

そして、お迎えの時のお母さんのことばが「ごめんねー遅くなって」から「ありがとう!待っていてくれて」になると男の子の様子が変わったのです。

お母さんが、男の子が頑張っていることを受け止めて「ありがとう」を伝えるようになると…男の子は、笑顔で帰るようになりました。

「ありがとう」って声に出すと自然と笑顔になりますよね。
子どもはお母さんの笑顔を見てホッとするのでしょう。

「ありがとう」は魔法のことばです。

 

「ありがとう」っていつ言うの?

実は、毎日の中に「ありがとう」のタネはたくさんあるのです。

子どもがきちんと片付けをした時「えらいね」ではなく「ありがとう!お部屋がきれいになると気持ちいいね」。

病院の待合室で静かに待てた時「イヤイヤしないでおりこうね」ではなく「静かにしてくれて、ありがとう」などなど。

当たり前のことも、「ご飯をたくさん食べてくれてありがとう」「今日も元気でいてくれてありがとう」と、何でも「ありがとう」にできちゃうんです。

我が家では、私がキッチンでガタゴト音を立てると、娘が部屋から「だいじょーぶ?」と、声をかけてくれます。時々物を落としたり、油がはねたりして大騒ぎする私なので、娘は気にとめてくれているのでしょう。
そんな小さなやさしさに感謝!

そして「心配してくれてありがとう!」と、娘に声をかける私です。

 

「ありがとう」と「褒めること」の違い

子どもは、えらい!すごい!おりこうねと褒められるとうれしいものです。でも、褒められるからやる、褒められないからやらない、そんな気持ちになることもあります。

「ありがとう」は感謝を伝えることば…子どもは、役に立つ喜びを感じます。

お母さんが喜んでくれることがうれしくて「ありがとう」と言われるとうれしくて、そんな喜びをたくさん味わうことが、感謝の気持ちを育てるのだと思います。

お母さんが「ありがとう」をたくさん言うと、子どもも自然と「ありがとう」を言える子になりますよ。

子どもたちが将来、誰かのためになりたい、何かの役に立つことをしたい、と大きな目標や意欲を持つその土台になるのは、お母さんからの「ありがとう」のことばかもしれませんね。

お母さんのことばの力は、すごいんです!

 

さぁ、今日は何に「ありがとう」を言おうかしら?

あなたの「ありがとう」のタネはすぐそこにありますよ。

 

次回は

「子どものやる気スイッチを刺激することば」をお届けします。

お楽しみに!

 

●プロフィール
保育・子育てアドバイザー
上野里江
HP:http://smiley-ai.com

保育士歴30年。保育園、幼稚園、子ども園で3000人以上の親子と関わり、その後3年間療育に携わる。
子どもに関わる大人を元気に笑顔に!をモットーに、コミュニケーション講座や相談を行なっている。

 

上野研究員のコラムはこちら

 

 

 

 

上野さん監修の自立を促すしつけシリーズ


自然とくつを揃えたくなる「くつおきシール」


手洗い・うがいがしたくなる「ねんどせっけん付き絵本」


じぶんでゴミを捨てたくなる「ぽいぽいどうぶつ」

 

 

この記事を書いた人

TOPICS