子どもと絵本の可能性
子どもは可能性の塊。
真っ白な紙、まだ触っていない粘土、買ったばかりのクレヨンと同じです。
いろんな人と出会い、いろんなことを経験して、少しずつ人間のかたちになって行きます。
子どもの可能性を育てること、守ること
ある日、すごい人見知りの子が公園で知らない子と遊び始めたり、苦手な野菜を完食したり、ボタンのシャツを自分でかけられるようになったり。これは全て経験の結果だと思います。
これって、本当にすごいことだと思いませんか?
大人でしたら、ずーっとそのまま変化はしないことでも、子どもは可能性の塊なのでそれらが出来るのだと思います。
子どもは想像力もすごいです。
前の職場で、ある子どもが「丸を2つ描いただけの絵」を、ドヤ顔で私に見せに来たことがあります。
私は、「これ何?」 子ども:…わからないの?
「雪だるま?」 子ども:違う。
「みかんとりんご?」 子ども:違うって…
「だんご?」 子ども:違う!ちがう!
「んー、わからないなぁ。」 子ども:猫だよ!
「…?ヒゲないよ?」 子ども:ヒゲは白いの。
「耳もないけど?」 子ども:耳も白いの。
「鼻は?」 子ども:だから白猫なの!
まさかそんなことを想像しているとは思ってもいませんでした。
子どもの想像力はやっぱり最強レベルです。クレヨンで描いてないところまで、頭の中にはちゃんと描いているのですね。
大人になると、この想像の可能性はどこに消えるんでしょう?
可能性はやっぱり大事です。一番大事かもしれない。可能性がこんなに大事なものだったら、大人の役割は『子どもの可能性を育てること、守ること』なのではないでしょうか?
出来るだけその可能性の泉が乾かないように見守らないと。
けれど、それはなかなか難しいことです。泉を乾かせてしまうものはたくさんありますが、泉の水を増やすものは少ないような気がします。
long term(長い期間)で物事を見てみませんか
可能性を育てる方法は色々あると思いますが、その中で一番の私のおすすめは、絵本を読むことです。
「絵本を子どもに読み聞かせると頭が良くなる」ですとか、「学校のテストの点数が上がる」と言う人がいます。
この話が本当かどうかはわかりませんが、本好きの人はもしかしたら、本当にテストの点数が高いのかもしれません。(私は違いましたが…)
とはいえ、絵本の可能性はshort term(短い期間)で図るのはもったいない気がします。社会がドンドン便利になるとshort termのことばかりに気になり、いつも短い期間で結果を求めてしまうように思います。
自分もそうです。
オンラインで買い物すると「え?届くのは3日間もかかるの!?」のと思う時があります。昔は、もっともっと時間がかかったのに・・・、現代人の悪い癖ですね。
たまには発想を変えて、long term(長い期間)で物事を見てみるのはどうでしょう?
例えば、絵本を読むだけで、普段私たちが経験出来ないことを経験することが出来ます。ソファに座ったままで海外、宇宙、はたまた違う世界まで行くことが出来ます。
ファンタジーからは、色んなことが経験出来ます。場所だけではなく、いろんな人と出会うことも出来ます。
このファンタージーでの経験は、子どもにとってすごく大事なことだと思います。
今すぐ結果は出ませんが、絵本で経験したことはきっと後で役に立つでしょう。
子どもに可能性の種をまこう
この間の、絵本の読み聞かせ会の後のフリータイムの時間に、3歳の女の子が絵本を持って私のところに来て、ピタッと隣に座りました。
「こんにちは。」 女の子:こんにちは。これ読んでほしい。
「いいよ。この絵いいよね。」 女の子:うん、かわいい。
「いくつかな?」 女の子:私、3歳!
「じゃ、年少さんだね?」 女の子:うん、月組。
「おしゃれだね。」 女の子:すみれ組もある。たんぽぽ組も。
「ミカン組は?」 女の子:ないない。昨日ね、豚の丸焼き食べたよ。
「それはすごいね!美味しかった?」 女の子:うん、全部食べた。
「全部!?お腹大丈夫だったの?」
この女の子は、動物がたくさん描かれている絵本を読みながら、ずーっと私との会話を楽しそうにしました。
後でイベントの担当者から聞いた話ですが、その女の子は、家に帰ってからお父さんに「今日はアメリカ人の友達が出来た」と嬉しそうに自慢気に言ったそうです。
私は、色んなところでバイリンガル読み聞かせ講座をやっています。
たまに子どもから「英語上手だね」と言われます。多分、子どもは絵本を出すと国籍や見た目など全部が関係なくなるのでしょう。「絵本が好き!早く読んで!お話が聞きたい!」という気持ちの方が強くなるのではないでしょうか?
これは本当にすごいことだと思います。大人でしたら絶対に緊張するし、この会話は出来ないですよね??
とよたかずひこ氏の『ワニのバルボン バルボンさんのおでかけ』を読むと、絵はとても可愛くて、話は面白く、この絵本の可能性をとても感じます。
バルボンさんの世界では、人間と動物が一緒に住んでいます。動物も人間も仕事をしていますし、お互いにコミュニケーションをとることが出来ます。
怖がることも無く、子どもも大人もワニと同じ世界に暮らしています。普通だとこの設定はホラー映画の様ですが、バルボンの世界ではこれが普通です。平和で理想的な社会だと思います。
「差別はだめ」、「見た目は違ってもいい」、「みんなの心は同じ」などと子どもに教えるのはなかなか難しいことです。
人間は無意識にメディアやまわりの会話からいろんな言葉や意見を吸収して、パズルのように自分を作り上げます。
子どもにバルボンさんの絵本を読んで上げると、バルボンさんが理想とする社会の良いところを吸収出来ると思います。
子どもの可能性の中で種をまくと、芽が出ます。その芽はどんどん大きくなり、大人になると立派な木になります。大人の木は、新しく出た芽を高いところから優しく見守り、芽の成長を見守ります。
そこには理想的な社会が生まれます。 1人ならあまり社会は変わらないと思いますが、大人が優しい気持ちでで子どもとふれあい、小さい頃からたくさんの絵本を読んであげると、次の世代、また次の世代はきっと良い社会の方向へ変わって行くと思います。
これはlong termの結果ですね。
子どもが絵本に出合う可能性を高めるにはどうしたら良いのでしょうか。それは、大人が子どもにたくさんの絵本を読んであげることだと私は思います。