ママの「わからない」から生まれた”見守り手帳”

前回は、「ママはなぜ子育てに自信がないのか?」ということを教育家小川大介先生に教えていただきました。

今回は、遊ぶ様子からどんな子どもなのかが知れる「小川式:見守り手帳」が、小川先生のどんな経験とノウハウからから誕生したのかを伺います。


松倉弥生

では小川先生にお伺いします。
キャスリングとかなコロンのゲームにセットされた、それぞれの遊び方に合わせた「小川式:見守り手帳」が生まれたのは
小川先生が親御さんとお話を繰り返された中で生まれてきたことがベースになっているのでしょうか?

小川大介先生
そうですね。
正確にはもちろん勉強して学んだこともあって。

心理学のひとつで
アメリカでNLP(Neuro-Linguistic-Programming/神経言語プログラミング)
といわれるものがあって、人の心というのは使う言葉によってすごく大きな影響があって
言葉を変えるだけで心の状態が変わるというメカニズムに注目したカウンセリングの方法で。
その中に優位感覚という、人それぞれがよく使う
視覚情報に反応しやすい人、聴覚情報に反応しやすい人、身体感覚情報に反応しやすい人、
といったタイプがあり、そのタイプによって言葉が違うし、反応するものも違うし
学ぶ上での学びやすさも違うよね。と。

NLPだったり加速学習だったり、ハーバード大学のガードナー教授という方が提唱している
多重知能理論(multiple intelligence/マルチプル・インテリジェンス)というものもあるんですが
みんな似ていて、それぞれ脳の使い方が違うよと、癖があるんだと。
その癖の違いによって、子どもの伸び方や反応の仕方が違って、そういったことを勉強したんです。

あとコーチングの勉強もして。
それは僕が運営していた個別指導塾で、より高いレベルの成果を上げていくためにはと考えたときに、こどもが100人いたら100通りっていうんだけども、実際100通りの教え方をしている講師なんて誰もいなくて。
実際には、長年「プロ講師」としてやってきた人も、自分のスタイルを押しつけているだけの講師がほとんどなんだなということを痛感したんです。

松倉弥生
そうなんですね!意外でした!

小川大介先生
教える人間って、与える側に回りがちで、自分の視点でしか見えなくなりがちなんですね。
コーチングのスタンスから見ると、それはすごく良くないというか、(視野が)狭い話だなと。
そこで、その子なりの感覚やタイプを見つけ出して、それに応じてどういう教え方をしたらいいのか?と考えた。

同じ算数を教えるにも、図を多用して教えた方がわかりやすい子もいれば
一つ一つ丁寧に言葉の意味を説明してから段階的に教えてた方が納得する子もいるし
日常生活の体験談を引き合いに出して「あ!あの感覚か!」といってから仕組みに持って行った方がわかりやすい子もいる。
そうやって教え方を変えなければいけない。

カウンセリングの中で、いかに早くその子を理解するかを意識して面談を行うと
面談のノウハウがすごく磨かれていったわけです。
その中で絶対に外せないキーワードとして「どういう遊びが好きですか」という言葉が定着したんです。

松倉弥生
へー!!

小川大介先生
最初はそれを、遊びを聞こうとしたのではなくていろんなことを聞いていたんです。
起きてから寝るまでの様子とか。どうやって遊んでるとか。

今まで6千回の面談をしていて、そうした話をしていくと遊びの話を聞いたときに
ものすごく簡単にその子の状態が見つかるなと気付いたんです。
(日常の)その子が口にする言葉だとか、しぐさとか、様子とかを親に聞いても
親のフィルターがかかってしまうので、どうしても実際の姿というのを言ってくれないんですよ。
「テストなんかよく悔しがってるんです。」と親が言って
「なんて言ってますか?」と僕が聞くと、「いや、ん、なんか悔しかったと思うんですよ・・・」
といった返答になってしまう。
でも「何をして遊んでますか?」という質問にはほとんどの親が説明できる。
「遊んでいる時ってどんな様子ですか?」と聞くと、余計なフィルターなしに話してくれる。
そういったことから、遊び方を聞くというスタイルができてきたんです。

そうして分析をして、その子の躓きの理由や伸ばし方を提案していくと
それが非常に効果があって。

と同時に僕が運営していた個人指導塾の講師に、そのノウハウを教えているのにも関わらずほとんどの講師が習得できない。
つまり教える仕事で頭が固まってしまっている。
そういう講師は与えることがしたいから、その子の特徴を汲み取って理解するマインドになれないんですよね。
答えを渡したがってしまう。
仕上がってしまった大人は変わることができないんだともつくづく感じました。

松倉弥生
大人は思っているよりもずっと、考えが固まってしまっているものなんですね・・・

小川大介先生
なので親からの影響が少ないところから、この考え方を元にすると
親子で一緒に遊ぶ中で子どもに対して気付くことができる。
だから僕の遊び方の本も、ただ遊んでいたらいいんですよと。本の中ではっきり書いてある。
ただ遊んでいる中で見つかる事があるし、そこに気付ける親に育っていくと。

どこかから情報を引っ張ってきて(子どもに)押し付けることに対して、一度立ち止まれる。
「あれ?うちの子違うかも・・・」と気付ける。うちの子を知っているから。
という流れから、今のタイプ別が生まれた。
だから僕にとっての”遊び”とはものすごく重要。

遠山さんは遊びを通して子ども自身が伸びていく、広がっていくということをすごく重視している。
僕は遊びを通して理解を深められるという点を重視している。
といった掛け合わせ方が良かったかなと。

”遊び”によって子どもを理解することは、大人にとっての糸口ですよという観点は
世の中であまり知られていないし、言っている人がいないので、
僕がそれを広める役目をさせてもらっている。

松倉弥生
なるほど!
”遊び”というキーワードだけでも(ハードルが低いようで)親はすごく安心するし
すごく取り入れやすい入り口でもありますね。

小川大介先生
そうそう。
分からないということがない。
子育てで親御さんが、特に女性の親御さんでよく口にされるのが、
「私には無理だから」「私には分からない」「私には自信がない」「うまくできない」
大体この言葉はどこかに出てくるんですね。
遊びですらうまく遊んであげられないということもある。
「うまく遊ぶってなんだろう?」と思う。

遠山彬彦さん
本当にそう思います。

佐藤亜希さん
大切に思っているからこそ、一つの言葉が
子どもにどれくらいの影響力があるかを考えてしまうから
言葉がけのひとつでも考えちゃったりするんですよね。
だから言葉もどういったらいいか分からなくなっちゃう。というママもいますよね。

小川大介先生
僕も声かけというフレーズを使うから自己批判になってしまうけれど・・・
言葉かけとか声掛けという言葉に惑わされてしまうけど
声掛けの一番大事なことは”話を聞くこと”なんですよね。
声掛けをどうしたらいいですか?と言われたら、何も言わず黙って聞けと。

聞いて、聞いて、聞いて、聞いてから言う言葉は、多分いい言葉に。
それがポイントで、それを聞かずに
魔法の言葉のように、それを言ったら子どもが急にスイッチ入るみたいなイメージが”言葉がけ”。

佐藤亜希さん
そうなんですよね。

小川大介先生
そういうふうに言ってしまう良くない本だとか、そういう人もいるんで
言葉かけ、声掛けを勘違いしている人もいる。

松倉弥生
確かにそういった刷り込みが入ってしまっているのかもしれませんね。

佐藤亜希さん
そういったものに出会うことも多いと思います

小川大介先生
そうですね。
〇〇すれば良い。の図式が多いです。

 


●キャスリングとかなコロンにそれぞれセットされた「小川式:見守り手帳」

 

今回は、遊ぶ様子からどんな子どもなのかが知れる「小川式:見守り手帳」は、小川先生のどんな経験とノウハウからから誕生したのかを教えていただきました。
小川先生のコーチングについてのお話も非常に興味深く、意外なこともたくさんあり、思わず聞き入ってしまいました。

次回は、キャスリングとかなコロンの生みの親である遠山彬彦さんと小川大介先生に、それぞれお気に入りのポイントについてのお話です。
次回もぜひお楽しみください。

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